2015年6月29日月曜日

【俳句新空間No.2】  神谷波の句――いきものたちと人間の時間 3 / 佐藤りえ


茅の輪くぐる宇宙遊泳の気分 神谷波
「夏越しの祓」の茅の輪のこととして読んだ。正しい作法に則ったくぐり方は、輪を中心として寝かせた8の字を描くようにまわるもので、地面に残る足跡はメビウスリングの様になる。神妙になって出入りを繰り返すうち、精神が逸脱していくような高揚感に包まれた様子がうかがえる。

2015年6月26日金曜日

【俳句新空間No.2】  神谷波の句――いきものたちと人間の時間 2 / 佐藤りえ


潜く鳰子守の鳰と分担が 神谷波
水鳥の世界でも家事分担があるのだろうか。もめたりすることもあるのだろうか。鳰は特にひなを背中に乗せて運ぶことがあるので「子守」に見えること請け合いである。潜ったほうは餌を取る係だろうが、雌雄でなく役割で言われているところが人くさい。

2015年6月25日木曜日

【俳句新空間No.2】  神谷波の句――いきものたちと人間の時間 1 / 佐藤りえ




名所の木陰にねむる通し鴨 神谷波

どこか名だたる場所を訪ね、ふとした木陰に眠る鴨を見た情景。鴨にとっては名所も名勝もないことだろう、水辺が保全されるなどして人が容易に近寄れないようなこともあるし、ならではの安全さを選んでそこにいるのかもしれない。通し鴨の束の間の休息に気づくのは、よそ見の楽しさのようでもある。

2015年6月23日火曜日

【俳句新空間No.2】  津高里永子の句 2 / 仲寒蟬


育ちすぎたる病院の熱帯魚 津高里永子 

人を食ったような二句目。この病院の職員は熱帯魚を可愛がるあまり餌をやりすぎたか。それにしても場所が病院なので、具合の悪そうな患者さんの中にあって熱帯魚だけが健康そうに見え、皮肉っぽくておかしい。

2015年6月22日月曜日

【俳句新空間No.2】  津高里永子の句 1 / 仲寒蟬



緑蔭にさがつて画布の木々を見る 津高里永子
連作では最初の数句が大事。その意味ではぐっと惹きつけられる始まりだ。絵を描いているのは作者だろうか、それとも絵を描いている人のすぐ近くにいるのか。いずれにせよ描き手は木々を描いているようである。全体を見渡すために画布から遠ざかって絵と風景とを見比べているのだ。すると自然にその人の身体が緑陰に包まれてゆく。読者もともに緑蔭に、そうしてこの「友引」という連作の世界へ誘われてゆく。