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2017年4月23日日曜日

【俳句新空間No.3】 筑紫磐井の句 / もてきまり


アガペーもエロスもつどへ盆をどり 筑紫磐井
おおまかに言えばアガペーとは神の愛、無償の愛。エロスは異性間にある愛と言えるか。まぁ、ここでは色々な愛が集え(命令形)と言っている。そして「盆をどり」をご一緒にということなのだ。この「盆をどり」とは、句会、吟行、結社、同人誌の集い諸々である。俳句は、奇しくも他者がいなければ成立しない表現形式なのだ。加えて〈一流であつてはならぬ俳の道〉なるほどと思った。俳句で一流、二流というのはないのかもしれない。大先生も、時にとてつもない駄句(しかし駄句の魅力というものはある)を発表するし、攝津幸彦のように母上(攝津よしこ:S55角川賞受賞・代表句〈凍蝶に夢をうかがふ二日月〉)に攝津の句を電話で披露したら「なんだい酔っ払いの句かい?」と言われたエピソードなどを思い出した。この無記名の句が真ん中にある表現形式の不思議さとその恩寵のようなものをいつも感じさせられている。 

2015年9月14日月曜日

【俳句新空間No.2】 筑紫磐井の句 /もてきまり


炎天のエミュウは我を見くびれる 筑紫磐井
エミュウはダチョウに似て大きく、翼を失くした鳥。─ここは新宿百人町。夜8時頃、男はたまに行くバー「エミュウ」に入る。そこには炎天にいるような服装のマダム・エミュウが居て、いつものグラスを出す。黒メガネを外した顔でぽつりぽつりと会話。「そう、あんたはまだ翼を持っているのね」とエミュウ。男は密かに見くびられていると意識する。(配役/マダム・エミュウ=美輪明宏、男=筑紫磐井)Film『黒エミュウ』予告編より抜粋─この続きも書きたかったが字数制限迫り、清く諦める。次は〈賢きはをんな をとこは茸である〉納得。これは古来より普遍原理でいたしかたない。〈蒼古たる歴史の上に敗戦忌〉「蒼古たる歴史の上に」が見セ消チでわざと消されている表記。「敗戦忌」は造語。もはや戦前かも。

2015年1月23日金曜日

登頂回望・号外編(その12) [筑紫磐井]  /   網野月を 


美しきひととよはひを重ねてゐ      筑紫磐井
新春帖(追加)として別ページに十句のみ掲載されている内の一句だ。十句には「スタア誕生」の題が付されていて、一見何れの句も漢字と仮名文字の取り合わせが有する句々である。内に一字空けの句と、句読点入りの句が一句ずつある。掲句はご伴侶と共に新年を迎えた慶事を叙しているようだ。が、「美しきひと」は伴侶とは限らない。例えば俳句の上での盟友であったり…。「美しき」が何を以ての修飾語なのかを明示していない点が巧みである。読者の想像力へその読みを委ね切っている。無防備なまでにだ。そこに新感覚のポエジーが生ずるのであろう。「かなしきほど騙されやすきくせいつも」「未知のものつねにうるわし水中か」「おしやれして出かける先はひとりもの」なども同様の手法で叙されている。

「スタア誕生」【俳句新空間No.2】(27ページ)2014(平成二十六)年[新春帖]所収