片蔭の突然切れているところ 北川美美暑い盛りであれば、片蔭を選んで歩くことは自然の行為。今まで意識することもなく片蔭を歩いてきたが、片蔭が突然切れて、はっと目覚めたように道を見つめ直す。そして、これからどこを歩こうかと途方に暮れる。「突然切れているところ」で終わっているのが心憎い。
2015年9月30日水曜日
【俳句新空間No.2】北川美美の句 / 陽美保子
ラベル:
2014(平成26)年8月作品詠,
No.3掲載,
YoMihoko(陽美保子),
北川美美
2015年9月8日火曜日
【俳句新空間No.2】仲寒蝉の句 / 陽美保子
木漏日のそのまま春の水の底 仲寒蝉そのままと言えばそのままの句ではあるが、不思議な魅力がある。それは動詞を略した俳句そのものの魅力。この句に「届く」などの動詞があれば凡句となるであろう。即物的な叙述の中に、木々の葉がまだ茂っていない明るい早春の林中と、そこに流れる浅い川のきらめきが髣髴とする。
ラベル:
2014(平成26)年8月作品詠,
No.3掲載,
YoMihoko(陽美保子),
仲寒蝉
2015年9月7日月曜日
【俳句新空間No.2】神谷波の句 / 陽美保子
汗の身におそれおほくて輪島塗 神谷波汗を拭きつつ、少し改まった席に着く。汁物の器は輪島塗。手にとれば高級な漆器にべとっと指紋が付いてしまいそうでとても手に取れない。まずはハンカチで汗を拭い、呼吸を整える。「おそれおほくて」の庶民感覚に読者はにやりとさせられる。調べ共々格調の高い〈拭ひてはもどる漆の春埃 長谷川櫂〉の漆の句とは違って、これもまた楽しい。
ラベル:
2014(平成26)年8月作品詠,
No.3掲載,
YoMihoko(陽美保子),
神谷波
2015年7月3日金曜日
【俳句新空間No.2】中西夕紀の句 2/ 陽美保子
混み合へる仏壇を閉ぢ夏蒲団 中西夕紀考えてみれば、この世よりあの世の方が余程混んでいるに違いない。たとえば、仏壇ひとつに自分と配偶者の両親の位牌を引き受けたとしても四つの位牌が入ることになる。なんとも狭苦しいことだ。せいぜい長生きをして、人口密度の低いこの世でゆっくり寝たいものだ。仏壇に比べ、夏蒲団が広々と涼しげに見える。
〈骨の音涼しく傘を畳みけり〉は、仏壇の句を読んだ後のせいか、「骨の音すずしく」まで読んで、骨壺を想像したが然にあらず。「傘」ときて楽しく裏切られる。
ラベル:
2014(平成26)年8月作品詠,
No.3掲載,
YoMihoko(陽美保子),
中西夕紀
2015年7月2日木曜日
【俳句新空間No.2】中西夕紀の句 1/ 陽美保子
父の日の暮れて影置く畳かな 中西夕紀何の影とは言っていないが、物自体が重要なのではない。外の方が明るいような夕暮時、まだ灯りを点けぬ薄暗い畳に落ちる物影の趣が、昔の日本の父の趣に重なる。谷崎潤一郎の『陰翳礼讃』を思い出す。「われらは落懸のうしろや、花活の周囲や、違い棚の下などを填めている闇を眺めて、それが何でもない蔭であることを知りながらも、そこの空気だけがシーンと沈み切っているような、永劫不変の閑寂がその暗がりを領しているような感銘を受ける。」掲句の影にはこれと同じ閑寂がある。その閑寂は、そのまま厳格で寡黙な父の姿でもある。
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2014(平成26)年8月作品詠,
No.3掲載,
YoMihoko(陽美保子),
中西夕紀
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