2015年9月9日水曜日

【俳句新空間No.2】作品詠鑑賞(大本義幸の句) / 夏木 久



 絵は抽象を、音楽は無調を、意味はリアルを超え、新たな人間存在の軽いリアルを模索する。なのに俳句はまだ写生?《ひらかなででもかけば(これは失礼!)。》
真摯に言葉に向かう、この姿勢を持って俳句に向かう(すでに近世にはあったのだが)、進歩であっても後退であっても、今はそれを考える、一番の愉しみとして。

死体を隠すによい河口の町だね 大本義幸
これは銀河の河口に違いない。口臭のきつい団塊世代の先輩が、インド旅行の思い出を―ガンジスに浮かぶ屍を見て、人生が変わった―と言っていた。そんな腐臭もこれには感じない。父母の屍も銀河まで来れば、生の香りを思い出すように謎めいて漂うようだ、曲解でも。