2015年9月18日金曜日

【俳句新空間No.2】 作品鑑賞/五島高資



  星々を招き入れたる植田かな 仲寒蟬
農村の夜景が目の前に広がる。ちょうと田植えしたばかりだから田圃には水面が多く見える。そこに星影が映えるという風情には、単なる実景を超えた天人合一の詩境を感じる。「招き入れたる」所以である。

  万緑や長き鉄橋わたりける 仲寒蟬
渓谷にかかる一本の鉄橋と山々の万緑がとても印象的な風景である。しかし、それだけではなく、「わたりける」という措辞から、一粒万倍に展開する豊かな詩情が感じられる。

  空へ出る仕掛としての青岬 仲寒蟬
たしかに岬の果てへ至ればその先は海原が広がるのみである。しかし、「海」と「天」が同じ「あま」と考えるならば、たしかに岬は「御崎」として神々の住む高天原へと繋がっているような気がする。青葉が茂る頃ならなおさらである。
 ほかの感銘句を以下に列挙する。

  波打つて大暑の腹の笑ひをり 中西夕紀
  泉湧く木の葉一枚踊らせて 福田葉子
  日の沖へ向かう柩の中に瀧 高橋修宏