2015年7月31日金曜日

【俳句新空間No.2】 神谷波の句 /もてきまり


麦秋の赤信号を牛走る 神谷波          
本当にこんな光景がまだ日本にもあるのかも知れない。赤信号なんて人間がかってに作ったもので牛には関係ない。でも、なんとなくそこを察知して走る牛。おおらかさからくる観察のおかしみがある。〈夏の夜の時計の針が逆回り〉神谷波さんのお仲間が集まれば夏の夜など、時計の針が逆回りして、皆、〈往年の少年少女水芭蕉〉になってしまう。〈遠くまでいく蟻近場ですます蟻〉この句もコンピニですます蟻とこだわって遠くの老舗に行く蟻を思わせる一方、精神的に遠くまでいく蟻と近場ですます蟻を思わせて意味の重層性とおかしみを披露している。