2015年7月20日月曜日

【俳句新空間No.2】  中西夕紀作品評 / 西村麒麟

 

向かひ合ひボート漕ぐ父独り占め 夕紀
世の中の全ての父が羨ましがるに違いない。息子でも良いが、そう読むと少し甘い。やはり娘の方が句が美しい。父親とはボートを漕ぐ男の力と、娘が見るに足る面構えが必要なのだろう。娘にはそれが誇らしい。

混み合へる仏壇を閉ぢ夏蒲団 夕紀
そう言えば仏壇は混みあっている。よく見るあたり前なことだけれども、よく観察すると仏壇とは妙なものだ。パタンと閉じて、眠る。仏壇の中の人も眠る。

ゆふぐれを白扇の行く厳島 夕紀
源氏と平家では文句無しに平家の方が好きだ。源氏なら昼、平家ならゆかしい夕暮れか。白は平家で厳島は清盛の夢だ。扇とくれば那須与一め。それぞれの言葉から平家の魂がちらちらする。作者もきっと平家贔屓に違いない。