廃炉より蛹の如き呼吸音 高橋修宏原発先進国イギリスの認識では、原子炉を完全に安全停止するのに七十年以上の歳月がかかるとされる。原発停止後、核燃料の冷却だけで三年かかり、そこから本格的な廃炉作業に入るのだが、原子炉は活動を止めたわけではなく、蛹のごとき静止状態を保ったまま、放射線物質を空気中に放出しつづける。高橋の句業の中心には、「歴史のテクスト」をもとにした「見えづらかった何ものか」(禁忌的本質)のあぶり出しがあるように思われる。震災後の彼の作品は、散発的に原発事故を作品のモチーフに据えているものが見られるが、本作もその一つであろう。歴史は既に成されてしまった事象などではなく、現在進行形の私達の生活そのものなのだ。
2015年6月30日火曜日
【俳句新空間No.2】 高橋修宏の句 1 / 後藤貴子
ラベル:
2014(平成26)年8月作品詠,
GotoTakako(後藤貴子),
No.3掲載,
高橋修宏
2015年6月29日月曜日
【俳句新空間No.2】 神谷波の句――いきものたちと人間の時間 3 / 佐藤りえ
茅の輪くぐる宇宙遊泳の気分 神谷波「夏越しの祓」の茅の輪のこととして読んだ。正しい作法に則ったくぐり方は、輪を中心として寝かせた8の字を描くようにまわるもので、地面に残る足跡はメビウスリングの様になる。神妙になって出入りを繰り返すうち、精神が逸脱していくような高揚感に包まれた様子がうかがえる。
ラベル:
2014(平成26)年8月作品詠,
No.3掲載,
SatoRie(佐藤りえ),
神谷波
2015年6月26日金曜日
【俳句新空間No.2】 神谷波の句――いきものたちと人間の時間 2 / 佐藤りえ
潜く鳰子守の鳰と分担が 神谷波水鳥の世界でも家事分担があるのだろうか。もめたりすることもあるのだろうか。鳰は特にひなを背中に乗せて運ぶことがあるので「子守」に見えること請け合いである。潜ったほうは餌を取る係だろうが、雌雄でなく役割で言われているところが人くさい。
ラベル:
2014(平成26)年8月作品詠,
No.3掲載,
SatoRie(佐藤りえ),
神谷波
2015年6月25日木曜日
【俳句新空間No.2】 神谷波の句――いきものたちと人間の時間 1 / 佐藤りえ
名所の木陰にねむる通し鴨 神谷波
どこか名だたる場所を訪ね、ふとした木陰に眠る鴨を見た情景。鴨にとっては名所も名勝もないことだろう、水辺が保全されるなどして人が容易に近寄れないようなこともあるし、ならではの安全さを選んでそこにいるのかもしれない。通し鴨の束の間の休息に気づくのは、よそ見の楽しさのようでもある。
ラベル:
2014(平成26)年8月作品詠,
No.3掲載,
SatoRie(佐藤りえ),
神谷波
2015年6月23日火曜日
【俳句新空間No.2】 津高里永子の句 2 / 仲寒蟬
育ちすぎたる病院の熱帯魚 津高里永子
人を食ったような二句目。この病院の職員は熱帯魚を可愛がるあまり餌をやりすぎたか。それにしても場所が病院なので、具合の悪そうな患者さんの中にあって熱帯魚だけが健康そうに見え、皮肉っぽくておかしい。
ラベル:
2014(平成26)年8月作品詠,
No.3掲載,
仲寒蝉,
津高里永子
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