夕暮れがきて貧困を措いてゆく 大本義幸
「夕暮れ」の擬人化。「貧困」という観念の物質化に成功している。昼間は、人それぞれに生きるに忙しく、やれやれと一息つく夕暮れ時になるとなにやら佇まいの貧しさが気になるのである。あるいは人類の夕暮れ時、類としての貧困がどんと卓上に課題として措かれていく意にも取れる。時間的な遠近法といい、こうした句は作れそうでなかなか作れないものだ。他に〈ノンアルコールビールだねこの町〉日本中、どこへ行っても、やや安普請のノンアルコールビールふう町並が増えた。
<冊子【俳句新空間No.3】2015(平成27)年1月作品詠,新春帖所収>