2016年2月5日金曜日

【曾根毅『花修』を読む 33 】 現状と心との距離感 / 山下舞子




表情を変えてゆく草花の瞬間があちこちに見える、そこはかとなくあたたかい表紙。
「花修」という名の句集のイメージが表れていると思う。
一点から見つめられる景色の、広いこと広いこと……花修の俳句からそんな風に感じた。
近くて見えていてもわからないこと。
遠くて見えないからわかること。
後になったら見えること。
現実世界を捕まえた美しく儚い標本のようでした。


元日の動かぬ水を眺めけり

水すまし言葉を覚えはじめけり

牡丹や飼い慣らされし片頭痛

祈りとは折れるに任せたる葦か

水吸うて水の上なる桜かな


【執筆者紹介】

  • 山下舞子(やました・まいこ)

関西俳句会「ふらここ」