2015年6月19日金曜日

【俳句新空間No.2】 前北かおるの句 /もてきまり


一時間時計をもどし街薄暑 前北かおる
「香港」という題がなければ、一瞬「えっ!」と思うのだが、なるほど香港時間は日本より一時間ほど遅いのだ。でも俳句って一句独立で読ませるので、この句はなかなかに不思議なテイストを持っている。外部=内部という世界観からか、作者は多作な写生派。その多作の中にコツンと日常の結界に言葉がぶつかる時がある。〈ぶらんこを捨てて帰国の荷を詰めに〉の「ぶらんこ」がそんな例だ。カシャと撮ったスナップ写真に作者さえ意図しない無意識の領域の小道具がバッチリ映る面白さがある。(尚この詳細は『断想』関悦史「ロータス25号」参照の事)