総身を日に煙らせて眠る山 前北かおる
「身延山」の題である。四句目の「湯宿」は下部温泉あたりであろうか?とすると「眠る山」はどの山を指示しているのであろう。山国の谷あいの身延から見える山形は決して切り立ったものではない。木々の多い山々である。その山々が眠るのであるから、冬とはいえ日の光りの多さを想像した。霧がかかって、その霧に日の光が乱反射して山を「煙らせて」いるのではないだろう。日の光そのものが、視覚を遮っているのだろう。句中に助詞を多用して文体を構成しているが、句意は幻想的情景を叙していて、将に「煙らせて」いるようだ。
「身延山」(『俳句新空間No.1』 2014(平成二十六)年1月1日発行