早春の海へ踏切渡りけり 岬 光世
(『俳句新空間No.1』 「新春帖」平成26年1月1日より)
康成の『雪国』の書き出しのようである。二十句の世界へ誘われるように、題「心待ち」の世界へ入り込んでゆく。海岸線に沿って走るローカル線を想像した。そのローカル線の踏切を海側へ越えて行ったのであろうか。座五の「けり」が不思議な情緒を描いている。作者自身が主語であるとするのが常識的であろう。がこれから始まる物語の主人公の行動のようにも思えるのである。
「心待ち」【俳句新空間No.2】 2014(平成二十六)年[新春帖]所収