ひとしきり泣いて氷柱となるまで立つ 佐藤りえ
たぶん、若松孝二監督「実録・連合赤軍あさま山荘への道程(みち)」という映画が下敷きになって構成した二十句。一句独立の視点で読むと、この句が物語から離れても句として最も立っている気がした。「ひとしきり泣いて」という肉体性(生)から「氷柱となるまで立つ」という精神性(死)の隠喩が決まった。他句に〈霜柱踏み踏み外し別世界〉求心的な組織に、間違って入り込んでしまう悲劇。赤軍でなくても、いじめ学級やブラック企業、カルト等、どこまでも人間が抱え持つ闇というものなのだろうか。