兎肉つるりと祝祭の近き 太田うさぎ
作者はマーケットを歩いているのであろう。クリスマス時期のパリの街中にクリスマス市が開かれる。毎日のように開かれる市もあれば、曜日を決めて開かれる市もある。その中で冬季の旬肉に兎がある。皮を剥かれて屋台の屋根下に何頭も吊るされて売られている。見た目には、グロテスクでもあり可哀想でもあるのだが、シチューにしたりグリルにしたりすると、これは美味である。筆者などは日本風に吸い物にした。兎肉の売られている景は、題の「パリ―十二月」にピッタリだ。くどくどしく表現しないで、「つるり」としたところに作者の工夫があるように思う。作者の俳号にも相たるので思い入れが有るかも知れないが、筆者にはそこまで思い至らない。
「パリー十二月」【俳句新空間No.2】 2014(平成二十六)年[新春帖]所収